最後の恋
その夜は、何度も激しく求められた。


もう無理だと、何度訴えてもやめてくれなかったのは、私が本心でそれを望んでないと分かっているから。


「杏奈…杏奈…」


耳元で何度も何私の名前を呼ぶ彼の声を聞くだけで、切なさで胸がつぶれそうだった。


「杏奈とこうやってずっといたい…」


“ 私も…… ”


言えない言葉が喉の奥に詰まって焼け焦げていく。


「ずっと…一緒にいよう」


彼の小さな呟きが胸に大きな波紋を広げ始める。


不安、切なさ、覚悟、様々な負の感情が心を支配する。


彼に抱かれながら訪れる別れの予感に胸を震わせていた…。


婚約者から彼を奪うことはきっと許されない。








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