最後の恋
「悪い事は全部、夢だ。嫌な事は全て忘れさせてあげる。」


そう言って彼の顔が近づき、優しいキスが重なった。


ベッドの上で何度も啄ばむように、じゃれ合うようなキスをした。


大切なものを扱うように彼の手はとても優しくゆっくりと私の頬をなぞる。


このまま幸せの余韻に浸かっていたいのに、それを許してくれないもう一人の自分がいる。


朝食の準備をしようと布団から抜け出そうとしたのに、彼の手と声がそれを阻止する。


「まだ、いいよ。もう少しこうしてよう…。」


結局、私が布団から抜けだせたのはそれから1時間近く経った後だった。


別にお腹が空いていたわけじゃない。


ただ…少しずつ彼から離れる準備をしなきゃいけない時が来ているのかもしれない。


そう感じていた。
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