最後の恋
来週の契約が済めば、部屋の鍵もすぐにもらえる。


引越しのためにやる事はたくさんあった。


***


「ストーカーの事は、もう心配しなくていいから。」


朝食後、休日のゆっくりと流れる穏やかな時間が私たちを包み込んでいたその時、隣に座る彼が思い出したようにそう言った。


自分のアパートにも帰れず口には出さなくても、ずっと気にはなっていた。


だから、突然言われたその言葉に驚いた。


私の知らないところで一体何が起きていたのだろう?


「え…どういう事?犯人が捕まったの?」

「いや…。だけど弁護士に入ってもらい誓約書も書いてもらった。相手も自分の置かれた社会的立場を理解したらしいから、もう大丈夫だよ。」

「そう…だったの。私のためにずっと色々調べて動いてくれていたの?」

「当たり前だろ。杏奈は俺の大切な人なんだから。」


そう言うと、彼の手が伸びてきてそっと肩を抱き寄せられた。
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