最後の恋
「キスして、礼央…」


あまりの動揺から耳をふさぐ事も、動くことも出来なかった。


「礼央…好き…。礼央は?」

「…俺も…」


お互いへの愛を確認しあった彼らは、来た時同様静かに出て行った。


ただ幸いだったのは彼らからは私の姿が見えていなかった、という事。


二人がいなくなった後も、まだ私は積まれた段ボールの前でしゃがみ込んでいた。


どれ位の時間、そうしていたのだろう。


足の痺れさえ感じる余裕がないほど、心は悲鳴をあげていた。

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