最後の恋
午後からは彼と一緒にアパートに戻った。


もう心配しなくていいと言われていた通り、玄関のドアにもポストにも変わった様子はなかった。


あれ以来初めて戻った3週間ぶりの自分の部屋は何も変わっていなかったけど、空気だけはひんやりと冷たかった。


ただ…お気に入りだった観葉植物は、長期間放置していたせいでダメにしてしまった。


3週間前にこの部屋を出た時は、気持ちに余裕がなくてそこまでは気が回らなかった。


大きな家具はベッドくらいで、後は小さなテレビボードとテレビがあるくらい。


掃除と荷詰め作業を済ませ、後は契約が済めば引越し業者に荷物を引き取りに来てもらうだけになった。


隅にダンボールの積まれたその部屋を眺める。


小さくてどこにでもあるような家だったけど、私にとっては初めての一人暮らしの部屋でいい時も嫌な時もここで泣いて笑って頑張って生きてきたのだ。


ここに越してきたばかりのワクワクした気持ちや、不安な気持ち、色々な思い出が蘇ってきた。


こんな形で急に引越しをする事になるとは思わなかったから、それだけがやっぱり残念で寂しく感じた。
< 180 / 277 >

この作品をシェア

pagetop