最後の恋
婚約者がいる事は、初めから分かっていた事。


だから今更その相手が誰だろうとショックを受ける自分はおかしいのに、相手が紫乃だと分かった瞬間…言いようのない痛みが胸をズタズタに切り刻む。


自分の心臓の音だけが、ドクドクと轟音のように体中を駆け巡り不快に響き渡っている。


やっぱり、二人はそういう運命なのだろう。


あの頃から二人の間には誰も割り込む事なんて出来なかった。


そして、私は今も昔も彼女にだけは勝てない。


紫乃は、今の私たちの関係を知ったらどう思うだろうか?


私のことをバカな女だと思う?


それとも可哀想な女だと思う?


どっちにしても、私たちの3人の関係は変わったようであの頃と何も変わっていなかった。


噂で耳にした事はショックだけど、彼の口から知らされるよりはマシだったのかもしれない。
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