最後の恋
直後に教室の前のドアがガラガラと開かれ古典の先生が教室に入って来た。


紫乃は私に優しく微笑むと慌てて前を向いた。


私は、ちゃんと笑えていただろうか?


これから彼女の前で今までと変わらず笑えるだろうか…


図書室での二人の行為は直接見てはいなくても、彼女のあの声が耳から離れなくてそれが逆に生々しく私の心に刻まれてしまった。


2人は恋人なんだし付き合っているという事はそういう事だって頭では分かっていたはずなのに、実際にその現場に居合わせてしまったら心が受けた衝撃は想像以上だった。


分かっているようで分かりたくなかった現実が一気に大波となって押し寄せ、私を簡単に飲み込んでいく。



「じゃあ、この和歌を誰かに読んでもらおうかな。えーっと…松野さん。」

「……………」

「松野さん?」
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