最後の恋
「だから、私たちはもう…終わったんだよ。」


自分で言ったその言葉が、威力を増し自分の心にブーメランのように跳ね返ってくる。


何も言わずに黙って話しを聞いていた恵里が静かに口を開いた。


「杏奈の辛い気持ちもよく分かるよ。だけどね今の杏奈は何もしないまま、ただ諦めて逃げてるだけじゃないの？」

「………」

「言い方はキツイかもしれないけど、周りの人の言葉だけに惑わされてるよ。結局は彼の言葉よりも、他の人の言葉を信じてるって事でしょ？それを相手に確認もせずに、自分の中だけで勝手に決めつけて終わらせて杏奈は本当にこのままでいいの？後悔は残らない？私だったら…無理だよ。本当の意味でまだ何もしないうちから諦めるなんて、絶対に出来ないし、したくない。」

「お前の彼への思いが本物で真剣に付き合って来たなら、最後まで逃げずに本気で向き合ってこいよ。別れる決断を下すのはそれからでも遅くねぇだろ。それに一ノ瀬君はちゃんと受け止められる男だと俺は思うけどな。」


二人の思いと言葉が痛いほど、心に染み渡る。


頑なになっていた私の心が少しずつほぐされていくようで、気づいたら涙が頬を流れていた。


もらい泣きをしている恵里が私にティッシュの箱を差し出した。
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