最後の恋
彼女に会って話をするって決めたのもただ真実を知るためだけじゃない。


あの頃、言えなかった思い、聞けなかった思い。


あの頃の紫乃からも、今現在の紫乃からも逃げずに向き合わないと彼とも向き合えない…そう思った。


だから昔のように、2人が一緒にいるところを目の当たりにして動揺はしても…その決心が揺らぐことはなかった。


彼には、今から紫乃と会うことを隠さずに伝えた。


そして後で必ず連絡をするから、もう一度会ってほしいという事も…。


彼との通話を終えた直後、目の前にバスが停まった。


前方のドアが開けられ、こっちをうかがう運転手さんと目が合った。


「すみません。乗らないので行ってください。」


慌てて頭を下げながら運転手さんにそう伝えると、開いていたドアは閉じられ誰も降車する事なくバスは走り出した。


スマホをバックにしまった私は立ち上がると、待ち合わせ場所へと向かうため来た道を駅へと戻り始めた。
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