最後の恋
紫乃が私に何を話すかはわからない。


彼女の話を聞いて、私が何を思うかも今はまだ分からない。


だけど、私は今度こそ彼女からも…そして弱い自分自身から逃げない。


彼女の本心を聞き、自分の本心も伝えないと前に進めないから。


その為に、私たちは再び出会ったのだと思いたかった。


約束の時間よりも30分早くホテルに着いた。


カフェに入ると、この間と同じ席に座る紫乃の姿が見えた。


彼女は入り口に私の姿を見つけると、小さく手を振り笑顔を見せた。


その姿が、高校生の頃の紫乃と重なり一瞬ドキッとした。


私も彼女に笑顔を向け手を振り返した。


一歩ずつ彼女に近づきながら、心の中では弱い自分と必死に向き合っていた。


「昨日はごめんね。電話で…。かなり酔ってて。」


目の前の彼女が申し訳なさそうに眉を下げ私を見上げていた。
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