最後の恋
「一ノ瀬くんの事が大好きなの。本当は終わりにしたくなんてなかった。だから…別れると言った言葉を取り消しても…いいですか?」


言っている間も緊張で、心臓が壊れそうだった。


そして彼は何も答えないまま、私の目をまっすぐに見つめる。


そんな時間が永遠のように長く感じた。


張り裂けそうな緊張感の中、もうこれ以上は無理だと目をぎゅっと瞑ったその瞬間、唇に温かいものが重なった。


キスをされていると分かったのは、開いた視界の中いっぱいに彼がおぼろげに見えたから。


その優しいキスが離れると


「俺は初めから認めないって言ってただろ。」

「一ノ瀬くん…」

「それに、俺の方こそごめんな。さっき、電話で紫乃から怒られた。大切な人を不安にさせるなって。 あいつ、杏奈のことが大好きだからさ。だから、俺も男として不安にさせないようにちゃんと言葉にするから。」


そして、彼は小さく咳払いを一つすると居住まいを正した。
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