最後の恋
入院の記録をつけるために新しいノートを持って来た。

今はスマホさえあれば、何でも記録を残すことはできるけど、形に残しておきたかった。

高校生の時、誰にも言えなかった自分の思いを吐き出せるたった1つの手段が日記だった。

そのノートは今も私だけの宝物として大切に置いてある。

彼と結婚して一緒に暮らすための引越しの時、久しぶりにその日記帳を開いて見た。

今よりも少し丸みを帯びた自分の字。

決して上手くはない一ノ瀬くんの似顔絵。

涙で滲んだ字にも、少し色あせたノートにも、その1ページ1ページ全てにあの頃の自分の思いが込められていた。

それらを見るだけで、まるで昨日のことのようにその思い出たちが鮮やかに蘇ってきた。

片思いの苦しい気持ちも、嬉しかった気持ちも全てーーー。
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