最後の恋
「一ノ瀬君、今日は皆の見送りに来てくれてありがとう…。」


彼がゆっくりと振り返った。


そして、小さくなりほとんど見えなくなったバスから私に視線を向けた。


「俺も皆を見送りたかったし。それに…松野さんが1人で泣いてる気がしたから…。」

「……え…?」


今日は日差しがとても強い日だったから、一ノ瀬君の後ろから降り注ぐ陽の光がさっきまではとても眩しかったはずなのに、何故か今は眩しさを感じなかった。


その言葉に驚き一ノ瀬君を見上げた私のすぐ正面に、陽の光を遮るように彼が立ってくれていたから。


一ノ瀬君は優しい目をして私を見ながら、まるで小さな子にするように私の頭を優しく撫でた。


私の心配を…してくれてたの?


それは、友達としてだろうけど……一ノ瀬君のそんな優しさに心がじんわりと温かくなった。


そして、同じくらい切なくもあった。
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