最後の恋
「あの、じゃあ僕はこれで失礼します。」

「わざわざ、送っていただいて本当にありがとう。」

「いえ…じゃ、松野さんもまた明日学校でね!」

「あ…うん。今日はありがとう。気をつけて帰ってね…。」


一ノ瀬君はもう一度母に会釈をし、爽やかに手を振って来た道を戻って行った。


「彼…良い子ね。とってもイケメンだったし。あの子ならママ、大歓迎よ♪」


一ノ瀬君の背中をまだ見送っていた私の後ろからママの弾んだ声が聞こえた。


なるべく顔に出ないように、筋肉を引き締めてからママの方に向き直った。


「そんなんじゃ…ないから。ただの友達だよ…。」

「あら、そうなの?残念……ママはタイプなんだけどな。」


言葉ほど残念がっているようには聞こえない声でそんな事を言うママには、私の気持ちなんて手に取るように分かっているのかもしれない……そう思った。
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