最後の恋
確かには相当驚きはしたけど……恥ずかしさを隠しながら今も立っているのに。


彼は、私の視線を感じたのかハッとなると


「……笑ってごめん。決して、バカにしたとかじゃなくて…」

「いえ、気にしてません…から。」

「ちょっと予想以上に驚いてくれてたから…ほんと…ごめん。」


なんだか、以前にも似た会話をした事を瞬間的に思い出した。


高校1年生の時の金曜日のお昼休み…


彼が私の当番の時に初めて本を借りにきて、緊張のあまり私が噛みまくってしまったあの時。


彼はそんな事いちいち覚えていないだろうけど。


どんなに小さな事でも、彼とのことは大切な思い出として胸にしまっているのは私だけ。


「本当に大丈夫です。だから、もう謝らないでください。余計に恥ずかしくなりますから…。」
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