最後の恋
専務の条件に合うお店への予約はすぐに出来た。


うちの会社から徒歩3分の距離にある、ビルの7階に入っている定食屋さん。


以前、春川室長に美味しくていいお店だと聞いてから私自身、何度も通っているし私は迷わずここに決めた。


専務の部屋にお迎えに上がろうとしたのに、それよりも先に専務の方から私を迎えに来た。


「松野さん。」


背後からその声に名前を呼ばれた事で私の肩はピクッと跳ねた。


ついさっきまでは、ここにいるはずのない人だと思ってた本人の声だったから…。


一瞬、これは現実なのだろうか…と思ってしまったけど振り返った私の目に映っているのは間違いなく一ノ瀬君だった。


「ごめん、待ちきれなくて迎えに来たんだけど…早すぎた?」


そう言って苦笑した彼を見て、胸の奥がきゅうっと締めつけられた。
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