最後の恋
午後からは社内の各部署を彼と共に回り、専務が普段使用する機会の多い会議室なども見て回った。


一通り社内の案内を終えて部屋に戻った専務に声をかける。


「専務、コーヒーでもお入れ致しましょうか?」


彼はソファの上でフーと息を吐きネクタイを少し緩めながら視線だけを私に向けた。


そんな彼の仕草と視線に胸の奥がトクンッと高鳴る。


「ああ、ありがとう。じゃあ…2杯入れてきてもらえるかな?」

「2杯…ですか?」

「1つはブラックで、もう1つはミルクと砂糖をつけてお願い。」

「…かしこまりました。」


この後、専務に来客の予定はなかったけど、彼がそう言うのなら私の仕事は彼の指示通りにするだけ。


もしかしたら、1杯だけじゃ足りなくて2杯は飲みたいのかもしれないし。


しかもブラックと、甘いコーヒーの両方を。
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