レス・パウダーレスのレビュー一覧
大人になり日々に流され、いつの間にか彼女は体の外側に自分と外界とを隔てる薄い膜を張っていたのですね。 その膜は色々なものから自分を守ってくれる。その代わり、心の動きが鈍くなって、何かに大きく心を動かされることもない。恋人の存在すらどこか不確かで、関係はどんどん深くなっていくのに、彼女の心はちっとも追い付けない。 その膜が剥がれかけた瞬間、偶然に飛び込んで来た彼。 ありのままを受け入れられ、彼女の固まっていた心が再び音を立てる。 そのシチュエーションと心の描写が秀逸で、私の心もふわりとほどけたような感覚がしました。 彼と会う前、彼女がファンデーションで化粧直しをせず、敢えてパウダーだけで済ませていたのは、その膜を破りたい、破って欲しい、外の世界でまた息をしたい。その願望のあらわれのように私には思えました。
ゆっくりの呼吸と同じ速度で読める。 バスルームで主人公が昔と今とを思っているシーン、なんだかジーンとして涙が出る。 共感だなぁ分かりすぎるほど分かる。 主人公を後ろから抱きしめたくなるけれど、それはきっと少女の自分も重ねてるのかもしれない。 辛い恋をしてきた人、社会で苦労してきた人ほど、塗り込めて固める鎧を作る術が巧いから。 自分を剥がしてありのままにしてくれる人を愛したいと思う作品でした。 作者さまみたいにふんわりとあたたかい作品です。
学生時代の恋、大人の恋。それを思い出す主人公にものすごく共感しました。そうだった、私もそんな恋をしていた。それをとてもみずみずしく思い出します。表現力が秀逸で胸にいろいろな感情が自然に蘇ってきます。大人の恋は難しいけれど、最後は清々しくて温かな気持ちになれました。
『うわ~ガキ』『うわ~オヤジ』10代には10代にしか出来ない事があるし、40代には40代しか出来ない事もある。過去を愁う事はしない主義。だけどたまには、あの頃は楽しかったな~などと負惜しみを言う事もあったりして。社会人にはとかく『常識』と言う物が付きまといますが、でもどんな年齢になっても、どんなに取り繕っても、誰しも求める物はいつもシンプルな『好き』のひと言。作中の彼女は、そんな『好き』にやっと巡り会えたのだと思いました。
この作品すごいです。 とても好きです。 大人な雰囲気も、展開も、背景も。 全部好きです。 ありがとうございました。