溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
「まあ、いいじゃない。浅田さんのおかげでチームの雰囲気がすごく良くなったわよ」
「そうですよ。俺、こないだ頼りにしてるって言われて感動しちゃいました」
「私も、私も。がんばってるって言われてうれしかったです」
「俺も、褒められて泣きそうになりました」
次々に私も俺もと主張されて、ちょっと引いてしまう。恐るべし、主任人気。
たしかに最近、主任は変わった。いろいろな意味で、変わった。
基本的には会社では無表情のままだが、本当に時々、私の前限定らしいけど笑顔を見せるようになった。
部下への声かけや、ねぎらいもしっかりしている。これがまた効果絶大で、主任のファン……もとい信者がすごい勢いで増えている。
「安心しろ、ここにいるメンバーは全員『御曹司と平凡女子の恋を応援するの会』の会員だから。ちなみに、俺が会長な」
なに、そのうれしくないネーミング。複雑な心境なんですけど。
どうせ、私は平凡ですよ。反論しようとした私の手を、小松さんがガシッと掴んだ。
「そうよ、浅田さん。私たちはなにがあってもふたりの味方だからね。応援してるわ」
「応援してます! 桐島主任、浅田さんを選ぶなんてすごく見る目ありますよね! 浅田さん、すごくいい人ですもん」
「うん! 桐島主任狙いの綺麗どころじゃなくて浅田さんを選んだんだから。本当、見る目ある」
なんだろう、全然褒められている気がしない。それどころかさりげなく落とされてる?
なんと答えればいいのかわからなくて、微妙な笑みを浮かべる私の肩を、半澤主任が叩いた。