溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
涙のウェディング
椅子に座って、大きな鏡を見つめる。純白のウェディングドレスに身を包み、ベールをつけた、どこからどう見ても“これから人生最大の幸せな瞬間を迎える花嫁”な私がそこにいる。
私がこの日のために選んだドレスは、ビスチェタイプのAラインのドレスだ。私の好みというよりは、写真映えを考えて決めたもの。
前から見るとシンプルなドレスだが、後ろに大きなリボンがついており、フリルとレースがふんだんに使われている。
主任には好きなものを選んでいいと言われたが、一応写真に撮られることを意識して後ろ姿が綺麗に見えるものを選んだ。
顔は映さないと言っていたから、後ろ姿の写真が多いんじゃないかと思ったのだ。
本当は、胸元と二の腕がレースで覆われた露出の少ないものにしたかった。だが、衣装合わせの担当の方にそういったクラシカルなデザインは似合わないと言われてしまって仕方なくあきらめた。
鏡に映る姿を見ても、自分ではないような不思議な気持ちになる。衣装合わせのときは不安しかなかったけれど、主任の隣に立ってもなんとか許されるレベルになったかな。プロってすごいなぁ。
あの思いもよらない再会から瞬く間に時が過ぎて、今日はいよいよパンフレットの撮影を兼ねた結婚式だ。
仕事が絡んでいるから身内だけともいかず、冷凍食品事業部と本部の偉い人も何人か来ている。会食は、開発したメニューの試食会も兼ねているからだ。