溺愛御曹司は仮りそめ婚約者


「ああ、浅田さんも相当面倒くさそうだもんね。浅田さんはさあ、小難しく考えすぎなんだよ。そんだけ悩んでるのは、桐島のこと、支えたい、幸せにしたいと思ってるからだろ? そりゃ、結婚するには覚悟は必要だろうよ。でも、もっと大事なことがあるだろ。浅田さんは、桐島のことが好き?」

なんだかひどいことを言われた気がするが、その答えはすぐに出た。

鍵が外れてしまったあの日から、その気持ちだけは変わらずに……いや、もっと大きくなって私のなかにある。

「……好き、です。すごく好き」

「あ、やべ。先に聞いちゃったよ。それまだ桐島に言ってないんでしょ? 俺が先に聞いたの、内緒にしといてな。俺があいつの昔の話したのも、内緒にしといて。バレたら殺される」

本気で焦っている姿がおかしくて、つい笑ってしまった私に、半澤主任も微笑む。

「世の中って、よくできてるもんでさ。男は見栄っ張りで、意地っぱりで、それでいて弱い生き物だからさ。それを受け入れて許す強さを持ってるのが、女なんだよね。男ってのは好きな子の前じゃ、かっこつけたいから気づかないふりをしてやってほしいけど。よーく考えてごらん、今までの桐島。浅田さんのこと捕まえるのに、相当必死だったと思わない?」

そう言われて、今までの主任の行動を思い返す。考えてみれば、たしかに必死な気がしないでもない。

逃げられないようにと、ガンガン埋められていった外堀。それは、はっきりしない私への彼の不安の表れだった?

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