溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
そして、土曜日。
気持ちよくベッドで眠っていた私は、めったに鳴らないインターフォンの音に驚いて飛び起きた。
え、空耳? ていうか、今、何時?
ベッドの上であたふたしていると、もう一度インターフォンが鳴った。空耳ではない。携帯で時間を確認すると、まだ七時にもなっていない。
こんな朝早くに、誰が来たの? 新聞の勧誘にしたって早すぎるよね?
謎の来訪者に戸惑っていると、今度は手に持っていた携帯電話が鳴り出して、ビクンと身体が跳ねた。
画面には、桐島主任の名前が表示されていて、まさか、と思いながら恐る恐る通話ボタンを押す。
『沙奈、ここ開けて』
私がなにかを言う前に、主任の低い声が電話の向こうから聞こえてきた。なんか、めちゃくちゃ機嫌悪そうなんですが。
「え、あの……」
『早く』
「いや、でも。私、今起きたところで……、あの、ええと。あれ? 会う予定……。いや、主任、仕事は……」
突然の主任の襲来に、ぷちパニックを起こしている私は寝起きなのもあってうまく頭が回らない。
支離滅裂な言葉を口にする私に、電話の向こうの主任が苛立ったようにため息をつく。
『いいから、早く開けて。十秒以内ね。一、二……』
「わ、ま、待って」
十秒以内に開けないと大変なことになりそうな気がして、慌てて布団を押しのけて玄関に向かう。