溺愛御曹司は仮りそめ婚約者


訳がわからないまま、実家に入るとご近所の方々と知らない人が私たちを待ち構えていた。

「すみません、遅くなって」

「いえ、時間通りですよ。では早速、花嫁さんはこちらへ」

「え?」

「沙奈ちゃん、ごちそう用意してるからね。楽しみねー」

「ええ?」

ニコニコしたご近所の皆さんに見送られ、状況がわからないまま客間に連れて行かれる。そこで窓辺に掛けられた真っ白な着物を見て、私は目を見開いた。

「早速、お支度始めますね。服を脱いでいただいて、こちらの和装用の下着を……」

「あ、あの……。今日って、その……」

「ああ。花婿様、まだお話してなかったんですね。結婚式はご家族様だけで済まされたとお聞きしましたが、今回はご近所の方へお披露目したいと」

「お披露目?」

「今まで花嫁様がお世話になった方々だから、自分も大切にしたいんだと。優しい花婿様ですね」

嘘でしょ。なに、これ。反則なんですけど。

泣きそうになりながら、言われるがまま、和装用の下着を身につけて、化粧をしてもらう。スッピンでいい、と言ったのはこういうことだったのか。

もう少し説明してくれてもいいのに、こんなのサプライズがすぎる。

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