溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
「なに、ニヤニヤしてるの? あー、もういい。沙奈のペースに合わせてられない。三週間もあげたのに、引越しの準備もしてないし。そっちのお仕置きもあるからね」
東吾に腕を掴まれて、抱えるようにしてベッドに押し倒される。
驚いて起き上がろうとしたが、東吾がのしかかってきて身動きがとれなくなった。さらに、服の隙間から彼の手がするりと入ってくる。
「わっ、と、東吾……待って。聞いて」
「無理、もう待てない。三週間放置された時点で、もう忍耐が売り切れました」
わあ、急に嫌味きた。とりあえずこちらの言い分を言おうと唇を開くと、そこに舌が入ってくる。
「んんっ、んーっ」
一回離してくれと背中を叩いて訴えても、東吾は離してくれない。逆にぎゅうっと抱きしめられたうえに、いつの間にかブラのホックを外されている。
わかってはいたことだが、やっぱり手慣れている。自分との経験値の違いに、ちょっとだけ悲しくなる。
もがいてもキスをやめてくれない東吾の顔を、腕に渾身の力を込めて強引に引き離した。
「……沙奈」
不満そうな声を出されるが、話を聞いてくれない東吾が悪い。そんな気持ちが伝わったのか、東吾はあきらめたように身体を離して涙目になっている私の顔から目を逸らした。