溺愛御曹司は仮りそめ婚約者


「ああ、もう。俺、沙奈のその顔に弱い。俺をこんなに振り回すのは、沙奈くらいだよ。わかった。ちゃんと全部聞くから、言って」

「う、だって……。私、こういうの全然経験ないし。今まで東吾が相手にしてきた綺麗どころのお姉さんみたいにスタイルもよくないし。そういうのは、もうちょっと勉強してから……わあっ!」

急に私の上に倒れ込んできた東吾が、大きなため息をついた。それが耳にかかって、身体がビクリと跳ねる。

「本当、沙奈はひどい。俺のことなんだと思ってるわけ? 最初に言ったよね。俺、恋愛に対しては真面目だって。もう七年以上、沙奈に恋してるのに」

「へ? な、七年……?」

思いがけない言葉に、パチパチと瞬きを繰り返す。私を見つめる彼の目は、真剣そのものだ。

「初めて沙奈を見つけたのが、大学三年の頃だから。そのときは彼女がいたけど、すぐに別れてそれから恋人は作ってないよ。沙奈は俺のこと女好きのプレイボーイみたいにいうけど、そういうの噂でも聞いたことある?」

「な、ない……です」

たしかに社内でも社外でも、そういう話はまったく聞いたことがない。東吾がナイスバディな女性を侍らせているんじゃないかというのは、すべて私の妄想だ。

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