溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
おまけと友達
契約成立の日から、数日後の金曜日。私はなぜか桐島主任の家で企画書の仕上げをしていた。それも、なんと泊まりこみ。
明日の土曜日に、いよいよ私は桐島主任を連れて茨城の実家に帰る。
その前に問題が発生した。私たちが恋人同士にしては、お互いのことを知らなすぎるということだ。主任に指摘されて間抜けな私は、初めてそれに気がついた。
まあ、それはそうだ。私たちは、ほんの数日前まで仕事上での会話しかしたことがなかったのだから。
「誰かさんが、俺に勝手に変なイメージを抱いて避けてたからね」
と、嫌味ったらしく言われたら私は縮こまるしかない。どうも私が、彼に身体だけの関係の相手がいるんじゃないかと疑ってしまったことが面白くなかったらしい。
別に二股、三股も当たり前の尻軽男だと思っていたわけではないんだけどな。モテるからそういう人のひとりやふたり、いそうだなと思っただけで……あれ、ちょっと思ってたのかな。
それに避けていたのは主任が会社では、あまりにも人間味がなくてちょっと不気味だからだ。
まあ、さすがに本人に不気味だと思ってたとは言えませんけどね。
そんなわけで、たたでさえ立場が弱めな私は、半ば強制的に桐島主任の家へのお泊まりを了承させられてしまった。