溺愛御曹司は仮りそめ婚約者


結局、東吾の言う通り、妊娠中ということで異動の話は保留になり、私は今も企画部で働いている。

ちなみにレストラン事業は順調で、すでに都内に二号店をオープンすることが決まった。地方への出店も決まりそうだと東吾が話していた。

プロジェクトのメンバーは現在、バレンタイン限定メニューの開発をしていて、なかなか忙しい毎日を送っている。

そんな私は、もうすぐ産休に入る。今日は、定期検診のために休みをとっていて、その帰りにじいちゃんのお見舞いに寄ったのだ。

「そら、えがった。また腹が大きくなったか?」

「昨日もきたのに? そんな、急に大きく……いたたっ!」

突然の腹部の痛みに顔をしかめると、じいちゃんが楽しそうに声をあげて笑う。

「なんだ、マメ太は今日も元気だなぁ」

『マメ太』は、お腹の中にいる子の胎児名だ。最初に見たエコーの写真に映っていたのがマメみたいな姿だったから、妊娠初期の頃は『マメ』と呼んでいた。

性別が男の子とわかってからは、それが『マメ太』に変化していった。女の子だったら、きっと『マメ子』と呼んでいただろう。

「本当に。最近、胎動がすごくて。蹴破って出てきそうなくらい動くから。痛くて」

「元気なのは、なによりだっぺよ。どれ、じいちゃんが子守唄、歌ってやろうなぁ。あら、こらぁ、本当に元気だ」

お腹に手をあてたじいちゃんの手を、マメ太がポコポコ蹴っている。いくら男の子とはいえ、生まれてからが心配になるくらい元気だ。

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