溺愛御曹司は仮りそめ婚約者


「どれどれ、マメ太。じいちゃんが子守唄歌ってやっかんなぁ。ねーんねーん、ころりーよ。おころーりよーぉお。マメ太は、よいー子だ、ねんーねしなーぁあ」

お腹をなでながら、じいちゃんが子守唄を歌い始める。原曲は、有名な『江戸子守唄』なのだが、歌い方が独特なのだ。

語尾が上がって、微妙にこぶしがきいている。そしてここから先がじいちゃんオリジナルの歌詞だ。

「はあー、ねんねんころころ、ねんねんころころ、ねんねんころころよーぉお。マメ太よ、かんかだ。ねんーね、しーなーぁあ。ねんころねんころねんころねんころ、ねんねんころころよーぉお……」

……エンドレスである。小さい頃から聞いていた私は、これを聞くと落ち着くのだが、初めて聞いたときに東吾は、「全然、寝れない」と涙が出るくらい爆笑していた。

例の残念な初夜だ。それはまだ笑い話にはなってくれず、もしかして一生言われるんじゃないかと心配している。

「お、大人しくなったなぁ」

「あ、本当だ。やっぱりすごいね、じいちゃんの子守唄は」

子守唄って、偉大だ。暴れていたのが嘘のように大人しくなった。静かになったお腹を、じいちゃんの手が優しくなでる。

「マメ太、じいちゃん、生まれてくるまでがんばっから。慌てなくていいかんな。じいちゃんに元気なの教えてくれんのはいいけど、お母さんにも優しくなぁ」

そういえば、じいちゃんのお見舞いに病院に来たときが一番、動きが激しいかも。

もしかして、元気なところを見せようとがんばってたの?

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