溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
滞っていた仕事もできて、事前の打ち合わせもできる。明日も桐島主任の車で実家に向かうから、迎えに行く手間も省けると言われたらもう、断れるわけがない。
そんなわけで、また高級そうなお店で夕食をごちそうになってしまったあと、私は桐島主任の家で期限ギリギリの企画書を仕上げているのだ。
一応、その企画書は自分なりに必死に仕上げて一度提出したのだが、向かい側で私と同じようにパソコンを操作している桐島主任にやり直しを命じられてしまった。
桐島主任の防御力をあげるアイテムらしい眼鏡は、度が入っていない代わりに、ブルーライトをカットする効果のある眼鏡らしい。
眼鏡をかけて真面目な顔でキーボードを打つ主任は、やっぱり冷たい感じがして同じ空間にいるだけで緊張してしまう。
「……そんなにカチコチに緊張しなくても、別に取って食ったりしないよ」
考えを見透かされたようにいきなり声をかけられて、ビクッと身体が跳ねた。全然こっちを見てなかったのに、やっぱり桐島主任は得体が知れない感じがする。
「企画書、できた? そろそろ恋人としての打ち合わせも始めたいな」
「あ、はい。できました」
勢いよくうなずくと、向かいの席から移動してきた主任が私の隣に座る。