溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
「見せて」
パソコンの画面を覗き込みながら肩を抱き寄せられて、身体がピキッと石化する。石になった私を見て、ふっと笑った主任が更に顔を近づけてきた。
「こらこら、恋人ならこのくらいの距離感は当然でしょ。そんなふうに固まってたら、怪しまれるよ」
「い、いや、でも! こんな、じいちゃんの前でイチャつく必要はないんじゃないかと」
「そうかな? かわいい孫が恋人と仲睦まじくしてたらおじいちゃんだって、喜ぶんじゃない」
そんなことは……大いにある。「えがったなぁ(良かったなぁ)、沙奈」なんて、ニコニコしながら見つめている姿が目に浮かぶ。
黙ったことを肯定と受け取ったのか、主任の手が腰に回る。
「うん、やっぱり立地のことは入れるべきだよ。せっかく病院に近い、治療食と介護食と取り扱うには好条件の立地なんだから、そこはアピールすべき」
「そ、そうですね。主任の言う通りです」
近すぎる距離にドキドキしながら、主任の言葉にコクコクとうなずく。
今度のレストラン事業で、私はメニューに治療食と介護食を取り入れることを提案している。
病院に近いという立地は、通院帰りに立ち寄れることを考えてもたしかに大きなアピールポイントだ。