溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
「そう、だね。友達だよ」
「じゃあ、沙奈は何があっても俺の味方でいてくれる?」
予想外の不安そうな声音に、つい目を見開いてしまう。パチパチと何度か瞬きをしてから、私はにっこりと微笑んだ。
「もちろん。何があっても味方でいるし、間違ってると思ったら怒ってあげるよ」
ぐっと拳を握った私の答えに、桐島主任は嬉しそうに、本当に嬉しそうに笑った。その笑顔にドキッとして、胸の奥でカン、カン、カーンという音がする。
それは、鍵が弾けとんだ音。私が何重にも鍵と鎖をかけて閉じ込めている『恋をする』という感情が表に出たいと暴れている。
「そう。沙奈が味方でいてくれるなら、がんばるよ」
「う、うん。がんばろ……んんっ」
必死で鍵をかけ直そうとしているのに、主任はそんなのお構いなしに私に覆いかぶさって唇にキスをしてくる。
チュッ、チュッと何度もキスを繰り返されると、頭がボーッとしてくる。前も思ったけど、この人キス上手だよね。
あれか、好きこそ物の上手なれっていうやつか。キスを受けながらひとり納得していた私は、口の中に入ってきた何かに驚いてビクッと身体を震わせた。
も、もも、もしかしてこれって……。
「これもキスの一種だけど、ダメ?」
私が歯を食いしばったからか、主任はチロっと舌を見せながら唇を離す。それを見て、私は口の中に入ってきたものの正体を確信した。