溺愛御曹司は仮りそめ婚約者

「伊達に長く生きてねぇからな。そういうのは、目を見ればわかる。えがったなぁ、沙奈。いい人に巡り合えて、本当にえがった」

いやいや、じいちゃん。目、悪いよ。たしか、白内障の手術をしてから絶好調だってはしゃいでたよね。

眼科にも連れて行かないとダメか? そんなことあるわけがないじゃない。だけど、そんなことは口にできるはずがない。

「平々凡々とした子だけど、優しい子なんだ。沙奈のこと、よろしくお願いします」

ペコッと頭を下げたじいちゃんに、主任も頭を下げた。

「こちらこそ、よろしくお願いします。沙奈さんのことを幸せにできるよう、精一杯努力します。ご家族が沙奈さんを大切にしてきたように、僕なりに彼女を大切にします。それから、彼女が大切なものは僕も大切にしたいと思っていますので、おじい様のこともいろいろ教えてください」

主任がにっこりとじいちゃんに微笑む。主任こそ、演技のノリがよすぎやしませんか?

私が大切なものを、大切にしたいって……例え契約とための嘘だとしても嬉しいんですけど。

「東吾くんは、顔だけじゃなくて中身も男前だなぁ。こんなじじいのことで良ければなんでも教えるよ。おじい様なんて、堅苦しい呼び方せんで、じいちゃんでええよ。どれ、お隣の渡辺さんから沙奈にってさつま芋もらったんだ。庭で焼き芋でもすっか。東吾くん、芋食いながら話すべ」

「え、本当? うれしい、渡辺さん家のお芋おいしいもんね」

ご近所の農家さんのお家で作っているさつま芋は、とてもおいしい。蒸すのもいいけど、やっぱり一番おいしいのは焼き芋だ。

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