溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
たいてい、じいちゃんの前がいるところで。それがまた、なんともいやらしい。
「誰に似たんだか。沙奈は変に強情っぱりなところがあるかんなぁ。ほどほどにしねぇと、東吾くんに愛想つかされっちまうぞ。素直になんねぇと、損だっぺ」
ほら、じいちゃんは主任の味方だ。それがわかっていて、じいちゃんの前でこういうことを言っているのだから質が悪い。
「……はぁい」
二対一。どうあがいても分が悪いのは私だ。もういっそ、愛想つかせてほしいです。
むすっと頰を膨らませる私を横目で見て、笑いをこらえている主任が憎たらしい。
「大丈夫ですよ。そういうところも含めて沙奈さんのことが好きなので。愛想はつかしませんから」
「優しいなぁ、東吾くんは。欠点も好き、なんて言ってくれる人はなかなかいねぇど、沙奈。大事にしないとなぁ」
「……ソウダネ」
じいちゃん、さり気にひどいね。どうせ私は強情っぱりの頑固ものですよ。
ていうか、主任は笑いすぎだよね。我慢しきれなくて声が漏れてますよ。
まったく、主任がじいちゃんをここまで懐柔してしまうとは、思ってもみなかった。
最近は、私より東吾くん、東吾くんで更に私の立場は弱くなっている。
ああ、もう……。なんだろうな、このどツボにはまってる感は。深みにはまって、もう抜け出せないような気がする。