溺愛御曹司は仮りそめ婚約者


「見れるよ、見れる。見てもらわないと。で、ばあちゃんとお父さんに自慢して。沙奈は、素敵な旦那さんをつかまえたぞって。ね、東吾さん」


わざと明るい声を出して、主任を振り返る。きっと、私の目は涙で潤んでいるだろう。

彼は複雑な笑みを浮かべて、そっと私の頭をなでた。

「そうですよ。見てもらわないと困ります。驚かせようと秘密にしていましたが、式は一ヶ月後に予約しています。ね、沙奈」

今日、何度目かの仰天発言に、目に浮かんでいた涙が引っ込んだ。もちろん、そんなの初耳です。

これでもかと目を見開く私を見て、彼はクッと喉の奥で笑った。

……笑い事じゃないんですが。私の知らないところで、この人はいったいなにを企んでいるの?

「じゃあ、それまではがんばっぺ。かっこいいべな、東吾くんの花婿姿は」

「いや、そこは沙奈の花嫁姿は綺麗だろっていうところでしょ」

思わず突っ込んでしまった私に、じいちゃんがケラケラと楽しそうに笑う。

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