溺愛御曹司は仮りそめ婚約者
無謀にも主任から逃亡を計ろうとした私は、あっさりとそれに失敗してご立腹な様子の彼に組み敷かれている。
ああ、もう。こうなったのも全部じいちゃんのせいだ。
今からほんの十数分前。お酒も飲み終わり、そろそろ寝ようという空気になったときに私は訴えた。それはもう、必死に訴えた。
「私、じいちゃんと寝たい」と。そんなかわいい孫娘の必死の訴えを聞いて、じいちゃんは深い深いため息をついた。
そしてつぶらな瞳を見開いて、こう言った。
「こんの、ごじゃっぺが! どこに許婚をほっぽって死にかけのじじいと寝るバカがいんだ! 沙奈は本当に色恋ごとになるとこったんねぇな! ◎△$♪×¥●&%#?!」
最後のほうは、早口すぎてなにを言っているかわからなかった。とにかく、茨城弁でこれでもかというくらい怒られてしまった。
「東吾くん、もう沙奈は嫁にやったようなもんだから遠慮はいらねぇ。早いとこ子でもこさえてもらえ」
そして、最後にそんなとんでもないことを口にして、扉をスパーンと閉めて和室に引っ込んでしまった。
予想外すぎるじいちゃんの怒りっぷりに、ポカンとしてしまった私は、すぐそこまで迫っている絶体絶命のピンチに気づくのが遅れた。
「なるほど。その手があったか」
耳元で聞こえたその声に、ビクッと身体が揺れる。お腹に長い手が巻きついて、さっと血の気が引いた。
「許可もでたし、作っちゃう?」
なにを……なんて、恐ろしすぎてとてもじゃないけど口にできない。