幸せになってもいいですか?


「疲れたー、飯なに?」


我が家のように部屋に入り
我が家のように寛ぐ


『…ビーフシチューよ』


その言葉に
ヤツは嬉しそうに
腹減った、とまた言い出した

決して恋人ではない
友達…でもないだろう


「紗枝、いい加減店に来いよ。俺が今より綺麗にしてやるよ」


キッチンに立つ私を
後ろから抱きしめ
髪にキスをしてくる


ヤツが好きなのは
私ではなく、私の髪だ


『嫌よ。今のお店、気に入ってるの』


「そんなこと言って、本当は奏のこと気になってるくせに」


誰にも言ってない心の内を
ヤツは何故か気がついている
けど、それに対して肯定も否定もしない

わかってるけど
認めたくないし、忘れたいからだ


< 10 / 128 >

この作品をシェア

pagetop