幸せになってもいいですか?
「疲れたー、飯なに?」
我が家のように部屋に入り
我が家のように寛ぐ
『…ビーフシチューよ』
その言葉に
ヤツは嬉しそうに
腹減った、とまた言い出した
決して恋人ではない
友達…でもないだろう
「紗枝、いい加減店に来いよ。俺が今より綺麗にしてやるよ」
キッチンに立つ私を
後ろから抱きしめ
髪にキスをしてくる
ヤツが好きなのは
私ではなく、私の髪だ
『嫌よ。今のお店、気に入ってるの』
「そんなこと言って、本当は奏のこと気になってるくせに」
誰にも言ってない心の内を
ヤツは何故か気がついている
けど、それに対して肯定も否定もしない
わかってるけど
認めたくないし、忘れたいからだ