幸せになってもいいですか?
会長はあまり会社には顔を出さない
出したとしても
誰彼構わずニコニコし
みんな平等に扱い
苗字ではなく、下の名前で呼んでいる
私のことを“紗枝ちゃん”と呼ぶが
麻里さんのことも“麻里ちゃん”と呼んでいる
「私ね、秘書長と付き合っていたの」
えっ、
口の中に入れた春雨のサラダが
鼻から出そうになる
『え、えっ?ひ、秘書長とですか?』
秘書長は…確か50代のはずだ
しかも、確か、既婚者だ
『で、でも…秘書長は、』
そう話そうとしたが、ここは社食
誰が聞いているかわからない
「ええ、だから今は上司と部下。ずっと好きだった。でも、想いが通じ合うと…違ったわ」