カミヒトエ

『暑いなぁ…。』

ぼそり呟いた。

――ミーンミンミ…

…ピタリ――

突然、蝉の鳴き声が止んだ。

『え…?』

さっきまで時折吹いていた風も、今は吹く気配すら無い。

『……ねぇ、諭…さく…ら?』

シィ…ン…

不思議に思い振り返ると、今まで傍に居た二人の姿が無い。

『…え、ちょっ!二人とも!フザケてんの?!』

辺りを見回すが姿は見えない。

大体からして、この裏庭は木しか無いんだ。

隠れる場所なんて無い。

突然消えた蝉の鳴き声。
突然消えた風。
突然消えた二人。

私は何故か、嫌な予感がした。


< 16 / 20 >

この作品をシェア

pagetop