溺愛執事に花嫁教育をされてしまいそうです
「──っ」
次の瞬間、温かい何かに抱き留められて、
ありすははっと顔を上げた。
「あっ……」
ありすを抱き留めていたのは
ダークスーツに身を包んだ20代後半位の男性だと気づく。
穏やかそうな顔立ちに、少しだけ驚いたように
微かに瞳を見開いている。
だが、次の瞬間、
ふわり、とその瞳を細めて笑みを浮かべた。
「ほら、落としたりしなかったでしょう?」
少しだけ長めに整えらえた前髪が
夜風に緩やかに揺れる。
微かに香るのは男性用の香水の香りだろうか。
それもこの距離まで近づいたからようやく
感じられるほど微かに品よくつけられていた。
闇の中で、きらりと光る切れ長の瞳をしたその人は
昏くて顔まではっきりと確認できないものの、
涼やかな容貌をしているように、ありすは思う。
(……って、ちょっと待って?
私、今、男の人にお姫様抱っこされてる!!!)
その事に気付いた瞬間、
「きゃあああああああああっ」
ありすは無意識で悲鳴を上げて、暴れ始める。
「ちょ……人が来ますよ」
男性に慌てて唇を手で覆われて、
じっと瞳を覗き込まれた。
「──お静かに願います」
穏やかにそう言う男性は
半ばパニックになったありすが暴れても、
彼女を取り落とすことはなかった。
「……おや。裸足なんですね。
それではしばらく、
私に抱きかかえられているしかありませんね。
……ありすお嬢様」
そう言われて目の前の見知らぬ男性が、
父親に関係する人間なのかとありすは、改めて思い至る。
この人からも逃げなければ、と、
抱き上げられた恥ずかしい恰好のまま、
ありすは必死でお願いをすることになった。
「あの、このまま逃がしてください。
私、このままだと良く知りもしない人のところに
お嫁に行かないといけなくなってしまうんです。
まだ……初恋すらしてないのに!」
そう叫ぶありすに、男性は小さく笑って答える。
「すみません。
貴女を逃がして差し上げることは出来かねます」
「え、どうして!」
咄嗟に尋ね返したありすに、男性は瞳を細め、
柔らかい笑顔を唇に浮かべ、答えた。
「……私は貴女を探しに来たのですから……」
次の瞬間、温かい何かに抱き留められて、
ありすははっと顔を上げた。
「あっ……」
ありすを抱き留めていたのは
ダークスーツに身を包んだ20代後半位の男性だと気づく。
穏やかそうな顔立ちに、少しだけ驚いたように
微かに瞳を見開いている。
だが、次の瞬間、
ふわり、とその瞳を細めて笑みを浮かべた。
「ほら、落としたりしなかったでしょう?」
少しだけ長めに整えらえた前髪が
夜風に緩やかに揺れる。
微かに香るのは男性用の香水の香りだろうか。
それもこの距離まで近づいたからようやく
感じられるほど微かに品よくつけられていた。
闇の中で、きらりと光る切れ長の瞳をしたその人は
昏くて顔まではっきりと確認できないものの、
涼やかな容貌をしているように、ありすは思う。
(……って、ちょっと待って?
私、今、男の人にお姫様抱っこされてる!!!)
その事に気付いた瞬間、
「きゃあああああああああっ」
ありすは無意識で悲鳴を上げて、暴れ始める。
「ちょ……人が来ますよ」
男性に慌てて唇を手で覆われて、
じっと瞳を覗き込まれた。
「──お静かに願います」
穏やかにそう言う男性は
半ばパニックになったありすが暴れても、
彼女を取り落とすことはなかった。
「……おや。裸足なんですね。
それではしばらく、
私に抱きかかえられているしかありませんね。
……ありすお嬢様」
そう言われて目の前の見知らぬ男性が、
父親に関係する人間なのかとありすは、改めて思い至る。
この人からも逃げなければ、と、
抱き上げられた恥ずかしい恰好のまま、
ありすは必死でお願いをすることになった。
「あの、このまま逃がしてください。
私、このままだと良く知りもしない人のところに
お嫁に行かないといけなくなってしまうんです。
まだ……初恋すらしてないのに!」
そう叫ぶありすに、男性は小さく笑って答える。
「すみません。
貴女を逃がして差し上げることは出来かねます」
「え、どうして!」
咄嗟に尋ね返したありすに、男性は瞳を細め、
柔らかい笑顔を唇に浮かべ、答えた。
「……私は貴女を探しに来たのですから……」