溺愛執事に花嫁教育をされてしまいそうです
懐かしいピアノの旋律に抱かれて……
会場の光が消えると一斉に拍手の音が鳴り響く。
舞台の中央では最近マスコミなどにも取り上げられている
美人ピアニストがピアノに近づいてきて、
会場に向かって会釈をする。
そのままピアノの前に腰かけると、
ふわりと柔らかく鍵盤に指先を預ける。
次の瞬間、その指は力強く鍵盤を操り、
美しい旋律を奏で始める。
音の奔流に身を任せながら、
そっとありすは隣に座る人の横顔を見上げた。
今日のデートの相手は、藤咲だ。
彼は出会ってから、ありすに対しては常に穏やかな表情を見せている。
だが、通り一遍の穏やかなだけな人ではないとありすに感じさせている。
その横顔は額は眉目が秀でていて、鼻筋がすぅっと綺麗に通っている。
そして意思の強そうな口元から顎に繋がっている。
(やっぱり優しいだけの人ではない気がする……)
それは有能な若手代議士、ということだけではなくて。
確かに見惚れてしまうほど素敵な人だけど……。
果たしてこの人の本質は
どんな人なのだろうかと、ありすは思っている。
(私が懐かしいと思った……あの曲を弾いていた人)
パーティで出会った時の彼の姿を思い出す。
あの曲は……夢の中のしゅんくんと繋がっているのか。
それこそオリジナルの曲というわけでない限りは、
それは元になっている曲があって……。
単にありすの記憶に繋がるその曲を、
彼がその時偶然弾いていただけかもしれない。
今日、その曲について尋ねてみよう
とそう、ありすは思っていた。
もしかしてそれが、
ありすの子供の頃の記憶に繋がるかもしれない。
(もし……しゅんくん、だったとしたら、
この人の事を私はどう思うんだろう)
この精悍な横顔を見せている男性が、
ありすの記憶の中のしゅんくんだったら……
無条件でその人に運命を感じるんだろうか。
夢の中で何度も見た姿に、
幼い自分は初恋の様な淡い憧れの感情を
感じていたのかもしれない。
そして、夢が覚めたら……
初恋の夢は現実の恋に繋がっている……
なんて、そんなこと……。
(……やっぱり、そんな簡単な物ではないのかな……)
今度機会があったら、
初恋の夢が、現実の恋に繋がるなんてことが
ありうるかどうか、橘に聞いてみるべきか。
ありすが小さな頃に出会った一人の男の子の話。
その男の子が未だに誰よりも気になっているなんて、
流石にそんな話はできないかもしれない。
なんだか恥ずかしすぎるし、
子供っぽいと思われてしまうかもしれない。
今ですらありすは橘に、
完全に子供扱いをされているような気がしてならないのだ。
舞台の中央では最近マスコミなどにも取り上げられている
美人ピアニストがピアノに近づいてきて、
会場に向かって会釈をする。
そのままピアノの前に腰かけると、
ふわりと柔らかく鍵盤に指先を預ける。
次の瞬間、その指は力強く鍵盤を操り、
美しい旋律を奏で始める。
音の奔流に身を任せながら、
そっとありすは隣に座る人の横顔を見上げた。
今日のデートの相手は、藤咲だ。
彼は出会ってから、ありすに対しては常に穏やかな表情を見せている。
だが、通り一遍の穏やかなだけな人ではないとありすに感じさせている。
その横顔は額は眉目が秀でていて、鼻筋がすぅっと綺麗に通っている。
そして意思の強そうな口元から顎に繋がっている。
(やっぱり優しいだけの人ではない気がする……)
それは有能な若手代議士、ということだけではなくて。
確かに見惚れてしまうほど素敵な人だけど……。
果たしてこの人の本質は
どんな人なのだろうかと、ありすは思っている。
(私が懐かしいと思った……あの曲を弾いていた人)
パーティで出会った時の彼の姿を思い出す。
あの曲は……夢の中のしゅんくんと繋がっているのか。
それこそオリジナルの曲というわけでない限りは、
それは元になっている曲があって……。
単にありすの記憶に繋がるその曲を、
彼がその時偶然弾いていただけかもしれない。
今日、その曲について尋ねてみよう
とそう、ありすは思っていた。
もしかしてそれが、
ありすの子供の頃の記憶に繋がるかもしれない。
(もし……しゅんくん、だったとしたら、
この人の事を私はどう思うんだろう)
この精悍な横顔を見せている男性が、
ありすの記憶の中のしゅんくんだったら……
無条件でその人に運命を感じるんだろうか。
夢の中で何度も見た姿に、
幼い自分は初恋の様な淡い憧れの感情を
感じていたのかもしれない。
そして、夢が覚めたら……
初恋の夢は現実の恋に繋がっている……
なんて、そんなこと……。
(……やっぱり、そんな簡単な物ではないのかな……)
今度機会があったら、
初恋の夢が、現実の恋に繋がるなんてことが
ありうるかどうか、橘に聞いてみるべきか。
ありすが小さな頃に出会った一人の男の子の話。
その男の子が未だに誰よりも気になっているなんて、
流石にそんな話はできないかもしれない。
なんだか恥ずかしすぎるし、
子供っぽいと思われてしまうかもしれない。
今ですらありすは橘に、
完全に子供扱いをされているような気がしてならないのだ。