溺愛執事に花嫁教育をされてしまいそうです
「……えっ?」
気づくと次の瞬間、男の顔が間近に迫っていて。
ありすが目を瞬かせた瞬間、唇が重なる。
今日はありすの前では吸ってないはずの、
瀬名の煙草のにおいがふわりと香った。
「んっ……」
ありすがパニックになっている間にその唇は遠ざかり、
代わりにくくっと笑う声が聞こえた。
「どっちにせよ、貴女はキスには、
慣れてはいなさそうだな……」
「……あのっ……」
咄嗟に唇を指で覆って涙目で目の前の人を見上げる。
「……頭で考えても多分わからなさそうだなと
判断したんだが……なんとなく……わかったか?」
「……えっと。好きじゃない人っていう意味……?」
「ありすちゃんは多少は俺に興味はあっても、
現時点で『好きな人』ではないだろ?」
そう言われて、思わず顔のほてりを感じながらも、
ありすは小さくうなづいてしまう。
「……で。感想は?」
楽しそうに聞かれてありすは口を手で覆ったまま、
それでもゆっくりとうなづいた。
「びっくりしましたけど……」
「嫌だ、とまでは思われなかったのなら、
俺としては現時点としては合格点だが……」
小さく笑って額を突かれる。
「……でも、びっくりした以上のトキメキとか
切なさとかは感じてない……って顔だな」
小さく苦笑をされてありすは、
なんて答えていいのか言葉に迷ってしまう。
(橘さんに恋愛感情なしにキスされたって
聞いたときは、すごく悲しくてショックだったのに……)
今こんな風に瀬名にされたことに、
びっくりしていても、悲しいとまでは思ってない。
それ以前に、橘にキスされたときは、
ぎゅって胸が締め付けられて、
なんだか苦しい程ドキドキしてしまったのに、
今はドキドキはしていても、
あの苦しい切なさみたいな物は感じていない。
……何が一体違うんだろう?
ありすは必死に考えても答えが出なくて。
「せっかくだからもう少し大人のキスもしておくか?」
悪戯めかした瀬名が肩を抱いたのを、
真っ赤になりつつも慌てて逃げ出そうとする。
「俊輔さん、もてるんでしょうけど、
手も早いんですね……」
思わず文句を言うと、瀬名は
これ以上はお預けだな、と呟いて、
その場から立ち上がり、ありすからほんの少し距離を置く。
「さあ……この間、次は少し大人のデートを
しようか、と言っていたからな……。
ここは最低ライン。この先を望むなら……」
次の瞬間携帯電話からアラームが流れる。
「と思ったが時間切れだな。
なぜ急に、こんな質問をしたのかの尋問は、
次回に楽しみにしておくか」
そういうと瀬名はありすに手を伸ばし、
「道が暗いから、エスコートぐらいはさせてくれ」
そう言うと、ありすの手を引いて
ゆっくりと駐車場まで歩き始めたのだった。
気づくと次の瞬間、男の顔が間近に迫っていて。
ありすが目を瞬かせた瞬間、唇が重なる。
今日はありすの前では吸ってないはずの、
瀬名の煙草のにおいがふわりと香った。
「んっ……」
ありすがパニックになっている間にその唇は遠ざかり、
代わりにくくっと笑う声が聞こえた。
「どっちにせよ、貴女はキスには、
慣れてはいなさそうだな……」
「……あのっ……」
咄嗟に唇を指で覆って涙目で目の前の人を見上げる。
「……頭で考えても多分わからなさそうだなと
判断したんだが……なんとなく……わかったか?」
「……えっと。好きじゃない人っていう意味……?」
「ありすちゃんは多少は俺に興味はあっても、
現時点で『好きな人』ではないだろ?」
そう言われて、思わず顔のほてりを感じながらも、
ありすは小さくうなづいてしまう。
「……で。感想は?」
楽しそうに聞かれてありすは口を手で覆ったまま、
それでもゆっくりとうなづいた。
「びっくりしましたけど……」
「嫌だ、とまでは思われなかったのなら、
俺としては現時点としては合格点だが……」
小さく笑って額を突かれる。
「……でも、びっくりした以上のトキメキとか
切なさとかは感じてない……って顔だな」
小さく苦笑をされてありすは、
なんて答えていいのか言葉に迷ってしまう。
(橘さんに恋愛感情なしにキスされたって
聞いたときは、すごく悲しくてショックだったのに……)
今こんな風に瀬名にされたことに、
びっくりしていても、悲しいとまでは思ってない。
それ以前に、橘にキスされたときは、
ぎゅって胸が締め付けられて、
なんだか苦しい程ドキドキしてしまったのに、
今はドキドキはしていても、
あの苦しい切なさみたいな物は感じていない。
……何が一体違うんだろう?
ありすは必死に考えても答えが出なくて。
「せっかくだからもう少し大人のキスもしておくか?」
悪戯めかした瀬名が肩を抱いたのを、
真っ赤になりつつも慌てて逃げ出そうとする。
「俊輔さん、もてるんでしょうけど、
手も早いんですね……」
思わず文句を言うと、瀬名は
これ以上はお預けだな、と呟いて、
その場から立ち上がり、ありすからほんの少し距離を置く。
「さあ……この間、次は少し大人のデートを
しようか、と言っていたからな……。
ここは最低ライン。この先を望むなら……」
次の瞬間携帯電話からアラームが流れる。
「と思ったが時間切れだな。
なぜ急に、こんな質問をしたのかの尋問は、
次回に楽しみにしておくか」
そういうと瀬名はありすに手を伸ばし、
「道が暗いから、エスコートぐらいはさせてくれ」
そう言うと、ありすの手を引いて
ゆっくりと駐車場まで歩き始めたのだった。