溺愛執事に花嫁教育をされてしまいそうです
「気になる男がいるなら、
きっちりけりをつける方がいいだろ?」

車のハンドルを自分で握ったまま
にやりとどこか悪そうに笑う瀬名を見て
ありすは思わず尋ねてしまう。

「気になる……?」
「ああ、ありすちゃんはそいつのことが
気になってしかたないから、
俺にまで、そんなこと聞いてきたんだろうし」

気になる……と言われれば、
この間の件から、
橘のことが変に気になって仕方ないのかもしれない。

(だって……今までは、
執事さんだって思ってて。
一人の男性としての顔なんて、
見たことなかったから……)

「こういうのってその人のことが
気になっているからなんですか?
なんで、私。気になっているんですか?」

「さあ……そんなのは俺がしるか。
その男に、惚れたのか、興味があるだけなのか、
それは自分だけが知っていると思うが?」

「惚れたって……。
それで……そんな状態で、俊輔さんはいいんですか?」

仮にも結婚相手候補だ。
その相手がこんなことを言い出して気にしないのかと
ありすが尋ねると、彼は笑って答える。

「もし俺が、お前のことを本気で欲しければ、
全力で取りに行くが、今のところ、
そこまで必死なわけじゃないからな。

……面白そうならお子様の恋愛相談ぐらい
乗ってやるよ。まあ場合によっては
恋愛相談相手っていうのも
色々便利なポジションでもあるしな」

楽しげに笑ってハンドルを握ってない手で、
ふわりとありすの頭を撫でる。
そんな仕草にはドキンとしてしまうのだけれど。

(でも、きっとこの、ドキンは違う気がする)

どうしてそう思えるのかは分からないけれど。
そんなありすの顔をちらりと視線だけで確認して、
瀬名は尋ねてくる。

「で? 恋愛初心者のありすちゃんはどうしたい?」
「どうしたいって……どうしたらいいんだろう?」
眉を寄せて、困惑するありすの顔を見て、

「いっそ……自分から迫ってみたらどうだ?
意外と予想外の反応が見れるかもしれないぞ?
……奇襲攻撃ってやつだな」

そう言って、喉を震わせて笑う瀬名は
どこか面白そうな顔をしていた。
経験豊富そうなこの人の案なら
何か分かることが出来るかもしれない。


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