王子様はパートタイム使い魔


 大きくため息を吐きながら、リディは開けっ放しの扉から外へ出た。彼はしばらく来ないつもりでいるようだが、近い内に来るだろうことがリディにはわかっていた。キスを多めにしたからといって、魔力が補充できるわけでも呪いの効果が薄まるわけでもない。
 気怠げにポケットから取り出した通信符を天に向かって放り投げる。通信符は速度を増して、紫の煙を吹き出しながら一気に上空に達して四方にはじけた。上空では紫の大輪の花が咲き、少ししてきらきらと輝きながら細切れになって消えていった。
 狼煙(のろし)効果の通信符だ。青年が家を出たら放るようにグレーテから指示されていた。貴族の青年が馬にも乗らず歩いて帰るとは思えない。おそらく迎えが来るのだろう。
 通信符の作り出した花が消えたのを見届けて、リディは家に入って扉を閉めた。


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