王子様はパートタイム使い魔
翌朝、ゼーゲンヴァルトの森は濃い霧に包まれていた。夜は明けていたが陽は昇っておらず、霧のせいで薄暗い。
いつもより早めに起きたリディは、今日から店を再開するために家の外に看板を運び出す。そして薬の材料になる朝露を集めながら、霧で白く霞んだ道の向こうを見つめた。
見つめる道の向こうから、予想通り黒い小さな影が猛スピードで近付いてくる。
「リューディア!」
駆け寄ってきた黒猫は、その勢いのまま地面を蹴ってリディに飛びついてきた。リディは黒猫を抱き止めてにっこりと微笑む。
「おはよう。今日からお仕事頑張ってね」
そう言って彼の頭を撫でた。