王子様はパートタイム使い魔
初仕事を難なくこなし、お土産に小魚の干物までもらってきたツヴァイは、その後も配達の仕事を次々と片付けた。
おじいちゃん猫のレオンはのんびりと歩くので、配達は午後までかかっていたが、ツヴァイは昼ご飯までにすべてを片付けた。人に戻すのが惜しいくらいの働きぶりだ。
昼ご飯を終えて、ひとしきり顔を洗った後ツヴァイが尋ねた。
「もう配達は終わったな。だったら人に戻してくれ」
「だめよ」
「なぜだ。オレの仕事は終わったんだろう?」
ツヴァイは不思議そうに首を傾げる。どうやら店の仕事というものをあまり理解していないらしい。
「日課は終わったわね。でもお店は夕方まで開いてるんだから、まだ終わってはいないわ。お客さんが来なくても、いつでもすぐ対応できるように店にいることが仕事なの」
「そうか。そういうものなのか」
「そうよ。それにあなた、ベッドから飛び出してきたんでしょう? たぶん今人に戻ったらナイトウェアのままよ」
リディの指摘に、ツヴァイは途端にうろたえた。
「しまった! なにか着替えはあるのか?」
「あなたの着るものがあるわけないじゃない。着替えを届けてもらうように知らせておいたから夕方までには届くはずよ」
「よかった」
ホッと息を吐いたツヴァイはひとつ大あくびをしながら体を伸ばす。そしてしっぽをゆらゆら揺らしながら自分のベッドに向かった。
「ヒマな時は寝ていていいんだったな。少し眠ることにする」
そう言ってベッドで丸くなった。
その後は夕方まで客はちらほらやってきたが、ツヴァイが配達に出るような仕事はなかった。
感心なことにツヴァイは、客がやってくると顔を上げてリディに続いて挨拶をする。リディのまねをしているだけだとしても、客には愛想がいいと好評だった。
先代のレオンは眠っているときに名前を呼ばれても耳をぴくぴく動かすだけで返事はしない。猫はだいたいそんなものなので、客に不評を買うことはないが、好印象を与えるのはいいことだとリディは思った。