王子様はパートタイム使い魔
やがて日が傾き始め、リディが店じまいをするため扉を開けると、そこにはロバの鼻先があった。首を傾けてロバのうしろを見る。まわりには誰もいない。
ふと、ロバの背に布袋に入った荷物が縛り付けられているのに気付いた。荷物の上には貫禄のある大きな長毛の黒猫が座っている。
見覚えのある黒猫にリディは笑顔で歩み寄って頭を撫でた。
「ベルタ、久しぶり。また大きくなったんじゃない?」
ベルタは嬉しそうに目を細めてにゃあと一声鳴いた。どうやらベルタはツヴァイの服を届けてくれたらしい。礼を述べながらベルタの豊かで艶やかな毛並みを撫でる。
リディは他愛のないことを話しかけながら、ひたすらベルタを撫でた。