王子様はパートタイム使い魔
「そ、その通りだ。民が何を考えているのか知るのは重要なことだ。父上も常に気にかけていらっしゃるだろう」
どうやらグレーテがうまくごまかしてくれたらしい。ここは話を合わせておくのが得策だろう。おまけに口が堅く聡明で権威もあるローラントを巻き込んでしまえば、後々有利ではある。
ローラントから事情が拡散される心配はないし、日中留守にしているユーリウスの妙な噂が立ったとしてもうまく収めることができるだろう。
またしてもグレーテの手の平で転がされているような気がして、ユーリウスは若干不愉快ではある。だが、秘密をひとりで抱えているよりは少し気楽にはなった。
食事を終えて部屋に戻ったユーリウスは、改めてグレーテの真意について考えた。単に怒りにまかせて呪いをかけたわけではないのだろうか。
そう思えば、あの怒りようは確かに過剰だったようにも思える。呪うほど怒るようなことではなかったとユーリウスはずっと思っていた。だが違うのか? リディにも指摘された。ふとグレーテの伝言が頭をよぎる。
”人の気持ちを学びなさい”
人の気持ちなどわかるものか。顔は笑っていても腹の中は何を考えているかわからない。正直どうでもいい。何を考えていようが、国や自分に不利益とならなければ。
だが、リディの気持ちは気になって仕方ない。ツヴァイではなく、ユーリウス自身に対して、どう思っているのか。
そんなことをぐるぐる考えながらベッドに横になって、ふと思い出した。
またベルタがやってきて不愉快な思いをしたくない。
ユーリウスはベッドから出て、きっちり服を着込んで再び横になった。