王子様はパートタイム使い魔
ローラントによると、城にやってきたコルネリウス公爵は、いつものように王に謁見して世継ぎはローラントをとプッシュした後、いつものようにローラントやアデーラ妃と歓談を楽しんだらしい。
その時婚約者である子爵家令嬢との結婚を具体的に進めようと言われたのだ。
子爵令嬢トルデリーゼは、ユーリウス、ローラント共に子どもの頃から交流のある、いわば幼なじみだ。
子どもの頃から理屈っぽいローラントは活発で奔放なトルデリーゼにうるさいと一喝されてたまにげんこつを食らったりしていた。性格も正反対で顔を合わせればケンカばかりなふたりは相性もよくないとユーリウスは思っていたので、はっきりとものを言うふたりがあからさまな政略結婚を了承したのが意外でしょうがない。
トルデリーゼの方はどうだかわからないが、ローラントは案外、公爵に強引に迫られ顔を潰すわけにもいかないのでとりあえず了承したのかもしれないと思った。
そうだとしたら、結婚を具体的に進められるのは困るだろう。
勝手に想像を巡らせて結論づけたユーリウスは、ローラントに同情して大きくため息をついた。
「それは困ったことになったな」
「そうなんです。私もトルデリーゼもゆくゆくはと思っていたので、婚約の話自体は快くお受けしたのですが結婚はまだ先のことと考えておりました」
「だろうな……って、え? なんだって?」
頷こうとしたユーリウスは、サラリと流されたローラントの言葉に引っかかって身を乗り出した。ローラントは少し戸惑いながら言葉を繰り返す。
「結婚はまだ先だと思って……」
「そこじゃない。ゆくゆくはって?」
ローラントは察したらしく、少し照れくさそうに問いかけた。
「ご存じありませんでしたか?」
「なにがだ」
若干けんか腰に問い返すユーリウスに、ローラントはあっさりと明かした。
「私とトルデリーゼは互いに想い合っております」
「聞いてないぞ!」
「言わなくてもわかっていらっしゃると思ったのですが」
「わかるわけないだろう。おまえたちは会うたびにケンカしていたではないか」
「嫌いでケンカしていたわけでは……なるほど」
そこで言葉を切ったローラントはユーリウスをまっすぐ見つめて小さく頷く。ユーリウスは気を削がれて怪訝な表情でローラントを見つめ返した。
「なにを勝手に納得している」