王子様はパートタイム使い魔


 前途の多難さにため息をついて、ユーリウスは腰を折られた話を元に戻す。

「オレのことはともかく、おまえの方はふたりで結託してまだその気はないと伝えればいいではないか」
「私は伝えましたよ。でも聞き入れてもらえなかったんです」

 ローラントも大きなため息をついて事情を説明した。

 コルネリウス公爵に結婚を促され、自分はまだ若輩者だし、結婚より前に学ぶべきことも多くある。順番からすれば、ユーリウスの方が先だからと言ってやんわりと拒絶したらしい。

「でもお祖父様には、あんな相手もその気もない者の結婚を待っていたら婚期を逃すと一蹴されました。さすがに兄上の了承も得ずに魔女殿のことを話すわけにもいかず、反論もかなわなかったのです」
「話したところで、庶民などと鼻であしらわれただろうけどな」

 自嘲気味に笑うユーリウスをローラントは不思議そうに真顔で見つめた。

「ゼーゲンヴァルトの魔女殿は一般庶民とは違うと聞いてますが」
「は?」

 思いもよらないローラントの言葉にユーリウスは思考が停止しそうになって固まった。あわてて頭を動かして考える。なにがどう一般庶民ではないというのだろうか。魔女だからだろうか。
 そしてふと思い出した。魔女は確かに一般庶民ではないと聞く。普段は庶民と変わりない生活をしているが、魔に関する不測の事態が発生した場合はそれに対抗する戦力となる。

「魔女軍の一員だからということか?」
「いえ、それとは別で、貴族の孫娘だそうですよ」
「はぁ!?」

 ユーリウスは今度こそ思考が停止した。



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