王子様はパートタイム使い魔
グレーテから、ユーリウスに妃を迎える気がないことを国王が憂えていたと聞いたとき、またそれかと苛ついて咄嗟に口走ったのだ。
「そんなに妃を娶らせたいなら、おまえの孫娘を差し出せ」
それがグレーテの怒りに火をつけた。
「なんてことを……!」
それしか言わなかったが、王宮魔女の後継者候補を王子の妃として横からさらわれたくなかったということか?
王宮魔女より王子の妃の方が女にとっては嬉しいことではないのか?
今考えてもよくわからない。呪いをかけるほど怒るようなことだろうか。だが、わかっていないことが問題だとリディに言われた。
「人の気持ちを学びなさい」
グレーテを始め、リディやローラントにも言われたことが頭の中にこだまする。
考えてみたくもないが、ここはグレーテの気持ちになって考えてみよう。
もしも、自分の孫娘を王子の妃として差し出せと言われたなら……。
少し考えてツヴァイはやはり首をひねった。庶民なら玉の輿じゃないか。生きていくために衣食住の心配をしなくていいなど、嬉しいと思う。
しかし、内情を知っているユーリウスは、誰が好き好んで王宮に上がろうとするものかと思う。
勝手のわからない王宮で、あのひとくせもふたくせもある面倒な貴族たちと孤立無援で渡り合っていかなければならない。衣食住の心配がなくても気苦労だけで老け込むか過労死するんじゃないかと思う。相当な精神力を必要とするだろう。
グレーテはそれを知っているから、気軽に引き入れようとするユーリウスを怒ったのかもしれない。でも、それならなぜ、リディの元で働かせているのか。ユーリウスがリディを気に入ってやはり妃としてよこせと言うとは思わなかったのか?
怒った理由は別にあるということか?
ますますわからなくなって、ツヴァイは再び首をひねった。